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帰ってきたルルーシュはナナリーへの挨拶もそこそこに、スザクの傍へと歩いてきた。いつもなら兄妹によるラブラブタイムが始まるのにと思いながら顔を見ると、穏やかに笑っているように見えるが、目が笑っていなかった。 「スザク、少し話がある」 「え?どうしたのルルーシュ?」 「どうかされたんですか、お兄様?」 きょとんとした顔で二人に尋ねられ、ルルーシュは一瞬言葉をつまらせた。 「いや、大したことではない。それより、このニュースを見ていたのか?」 ナナリーを不安にさせてしまったと、ルルーシュは話題を変えた。 今ここでスザクを連れて行かなくても、別のタイミングで部屋にでも呼び、話を聞けばいいのだ。せっかくナナリーとスザクが楽しく話しているのを邪魔してしまったと、若干後悔もしていた。 「はい、お兄様、ゼロの偽物が現れたんですって」 「そうなのか?」 「うん、そうなんだ。しかも本物のゼロよりかっこよかったよ」 スザクの言葉に、ルルーシュはピクリと反応した。 「偽ゼロが、ゼロよりも格好いいと?」 「うん!」 あれのどこが俺のゼロより格好いいんだ!ありえないだろう!と睨みつけたが、小さな子供のようにキラキラとした瞳のスザクに、怒鳴りたい衝動は一気にしぼんでいった。 「・・・俺も、ニュースを見ていたが、あの偽ゼロ・・・格好いいか?」 作業服に黒いコートを肩に掛け、軍手に長靴、フルフェイスのヘルメット、更には白文字でZERO。かっこいいのか?あれが?解らない、スザクのセンスがわからない。 「うん、だって本物のゼロは身体が理解るようなピッタリした服着てるだろ?あれはエロ・・・じゃなくて、貧弱に見えるよね」 体の細さを強調する服。 普段はマントの下に隠されているせいか、目にした時にはあまりの細さに驚いたものだ。あれで軍人たちの相手ができるのか?いや、戦闘という意味でだけど、おそらく戦いなんて出来ないだろうと、一見して理解る。逃げの一手しか打てないのが丸わかりな衣装・・・弱点を自ら晒しているようなものだ。 ・・・色んな意味で。 「貧弱・・・だと・・・?」 若干、本当に僅かではあるが、ルルーシュの声のトーンが下がった。 どうやらイライラスイッチを押してしまったらしい。 しまったとは思うが、あの衣装はヤバイ。顔がわからない間はそうでもなかったが、あの仮面の下がこれだと知られれば、あの衣装のエロさに皆気づいてしまうだろう。 だからどうにかしてあの衣装をやめさせなければ。 「そうだよ。細い体だって見て理解るでしょ?でも偽ゼロはつなぎだから体型がわからないのがいいよね」 「・・・そ、それは一理あるが、だが、あれが格好いい事にはならないぞ」 あの体型で戦闘は無理だと、貧弱なもやしっこだと世間にアピールしていると・・・!?と、内心困惑しながらも、ルルーシュはやはり認められないと言った。 「格好いいじゃないか。それに実用性が高いものを使っている。うん、まさに働く・・・いや、戦う男って感じだよね!」 実用性・・・軍手と長靴、そしてつなぎのことか・・・確かに作業をする上ではあのような格好をする者は多い。だがそれが格好いい・・・?いや、まて。スザクの中では働く男=格好いいなのだ。ゼロの洗練された美しくかっこいいデザインよりも、作業服のほうがかっこよく見える、それがスザクなのだ。 そうか、そういうことかと理解し、少しスザクの趣味がわかったとルルーシュは内心喜んだ。大人になってからの7年とは違い、10歳から17歳までの7年は大きい。今のスザクの趣味嗜好がわからなかったが、これで見えてきた気がする。 「そ、そうか。俺は・・・そうだな、偽ゼロも悪くはないと思うがしかし、やはりゼロのほうが格好いいと思う」 だよね。だからあんな格好してるんだよねと、スザクは内心思うが顔にも口にも出さなかった。同意してしまえば、あの格好を続けてしまうから。 「お兄様、私もゼロのほうが格好いいと思います」 どちらも見たことがないというのに、ナナリーはきっぱりと断言した。 あ!裏切り者!とスザクは思ったが、もちろん口には出せなかった。 「ナナリー、解ってくれるか!」 「はい、お兄様」 この後二人の世界に浸ったことは言うまでもない。 |